二本指が座す【円卓】で出逢えるNPC、ディアロス・ホスロー。
狭間の地では珍しい、有効的な性格をした男性で、プレイヤーを快く受け入れてくれました。
なんでも彼は、幼馴染みであり従士でもある、ラニアなる女性を探していた。心配する様子から、彼にとってとても大切な存在である事は察せます。
その後、湖のリエーニエ「学院の門前町」にてラニアを発見する事になりますが、それは痛ましい再会となりました。
ラニアは何者かに殺害され、物言わぬ遺体となって発見されました。
ディアロスは泣きじゃくり激昂し、復讐する事を決意。以後、円卓から姿を消します。
しばらく彼と別れたまま旅は続いていましたが……なんと意外なところで再会。
彼はアルター高原、ゲルニア火山の火山館に身を寄せていました。
火山館……そこは無慈悲な破片の君主ライカードを王と仰ぎ、大いなる意志と褪せ人狩りを目的とする集団の本拠地。
ラニアの復讐も忘れたわけではないが、館の主であるタニスに誘われ、英雄になる事を志したと明かします。
……しかし、火山館の依頼を順調にこなしていくプレイヤーとは違い、どうも彼は上手くいっていない模様。自分は家名を汚しただけではなく英雄にもなれなかった意気地なしと、大層落ち込んでいます。
結局、彼はここでも何も掴む事はなく、ひっそりと姿を消しました。
火山館の、誰からも心配すらされる事なく。
そして彼が行き着いた最後の果てが――湖のリエーニエ、谷底に隠れた壺村。
鉄拳のアレキサンダーの故郷でもある、生ける壺たちが暮らす、隠し村です。
◆◇◆
ディアロスは、たぶん優しすぎた。狭間の地にあっては、その優しさは何の意味も成さないほどに、心から優しい人物だったのだと思う。
一連のイベント、入手した装備のテキストから、それがおのずと読み取れます。
まずディアロスの実家である【ホスロー】家。狭間の地では武功高き名門のよう。
彼には、兄がいた。ホスロー家の当主でもある、ユーノ・ホスローが。
強いコンプレックスになるほどに、兄のような立派な戦士になりたかったと願い続けていた彼。結局それも叶わなかったようだけど。
でも、だからこそ、兄ユーノはディアロスを愛せた。
口先ばかりで意気地のない無能な弟。血を分けた兄弟で当主の座を争う事はなくて、実の弟を愛する事が許されたんです。
汚い話ではあるけど、名門だからこその問題ですね。
兄ユーノがディアロスを愛していたのは本当で、そしてそのままでずっと居て欲しいとも思っていたに違いない。
あんなに立派な甲冑に身を包んだディアロスは、本当はとても弱かった。
アプデで新規追加したNPC「小壺」も言っています。
「壺師になるには、ツルツルの手じゃないと駄目なんだ。おじさんはツルツルの手だけど……僕はお兄ちゃん(orお姉ちゃん)のような強い人が良かった」
プレイヤーは壺師にはなれないとも言われているので、この言葉からディアロスはツルツルの手=ろくに武器を握った事がないという事が分かります。
何者にもなれなかったと自虐するディアロス、それでも壺村で壺たちの世話をする様子は、何処か重い軛から解き放たれたように穏やか。
きっとそれこそが彼の本来の姿なんでしょう。
そもそも彼が火山館の一員になったのは、タニスが唆したから。
けれど、自分がやろうとしている事への罪の意識とか後悔とか、後になって思い知って絶望したんじゃないだろうか。
火山館から依頼される褪せ人は皆、英雄だった。中には古い時代からの褪せ人すらいた。
そんな手練れ中の手練れに、ディアロスが勝てるはずもない。
さらに追い打ちとして、あの依頼が出た事を知った。
――実兄ユーノの、殺害依頼。
そりゃあもう、トドメになったと思う。
ユーノは、火山館から勧誘を受けていたが、断ったそうな。血塗れた道なら既に歩いている、だが俺は自分を決して英雄とは呼ばない、と。高潔な言葉ですね。
タニスの使う「英雄」という言葉に溺れなかった兄、かたや溺れた弟……バキバキに折れると思う。
たぶん、ディアロスも気付いたんじゃないかな。火山館の依頼にあがる人物とは――勧誘を断ったり、後々に火山館の障害になる真の英雄たちであると。
彼は名門ホスローの名を捨て、壺師として壺村で過ごす事に。
……ようやく見つけた穏やかな日々も、そう長くは続かなかったけど。
生ける壺を狙う密猟者が、村を襲撃。あんなに居た壺は全て砕かれ、略奪されてしまった。プレイヤーが到着した時には、既に何もかも壊れた後で手遅れだったけど、
村の中央で、倒れ伏すディアロスの姿。
ディアロスはツルツルの手で「ホスローの花弁」を取り、村を守ろうとした。
壺の大部分は壊れてしまったけれど、小壺だけは守り切った。小さな小さな、未来の壺の戦士を。
「村の壺は皆無事だ」と嘘をつくと、彼は心から安心して息を引き取った。
幼馴染みのラニアの復讐も出来ず、身を寄せた火山館で狩りも出来ず、そしてやはり兄と争う事は出来ず、彼は何者にもなれなかった。
それでもその最後は、紛う事なき戦士であり、小壺の胸を打った「英雄」であった。
ベタだけど、ディアロスの最期は、誇るべき事ですね。
◆◇◆
火山館関連のイベントと、破片の君主ライカードは終わっていないので、全てを見てはいませんが。
女主人タニス、不信感しかない。
狭間の地においてまともなひとは本当にごく少なく、皆が皆それぞれの思惑で生きている。
(女神マリカの子達があんな調子だから、二本指も呆れて褪せ人を王にさせようとしているくらいだし)
タニスの目的は彼女の王のためですが、勧誘を断った相手を殺害しようとしたり、古い時代からの褪せ人を殺そうとしたりと、ろくでもない事は胸に刻まれた。
それでも、ラーヤ(火山館に招待してくれる女の子)を慈しむ様は母性に溢れているけど……。
火山館周辺のイベントの結末は、いかなるものか。
フロムだからな……うん……今回も覚悟しないと……。
というか、既にもう胸が痛んでる当方。
アイテム回収のためには褪せ人狩りも致し方ないとメンバー入りしましたが、依頼される人達の立派な事……二週目は火山館と一切関わらずに過ごしたいと思います。
【追伸】
エルデンリングでもパッチが居て安心しました